戦後を代表する写真家「奈良原一高」の写真展『王国』が、2014年11月18日から東京国立近代美術館で開催される。
「王国」は、1958年に個展(富士フォトサロン、東京および大阪)と雑誌グラビアページ(「中央公論」1958年9月号)において、女性刑務所に取材した「王国(その1)壁の中」と、修道院を舞台とする「王国(その2)沈黙の園」二部構成で発表されました。
その後、1971年に中央公論社から「映像の現代1」として刊行された写真集『王国』(英題はMan and his Land)では、当初の第一部と第二部を入れ替え、さらに1956 年発表の「人間の土地」シリーズより、長崎沖の炭鉱の島、通称“軍艦島”に取材したシリーズを第三部とする構成へと変更されます。そして1978年、朝日ソノラマからソノラマ写真選書第9巻として刊行された写真集『王国 ―沈黙の園・壁の中―』では、再び「沈黙の園」60点、「壁の中」30点、全90点からなる二部構成へと編み直されています。この1978年版では、Domainsという英題が与えられました。
今回展示する、株式会社ニコンから寄贈を受けた87点は、1978年版写真集での構成をほぼ踏襲するものです。
引用元:東京国立近代美術館
奈良原一高と言えば、1959年に東松照明や細江英公らと結成し、戦後の日本写真史に強いメッセージを残した写真団体「VIVO」のメンバーである。
結成前年の1958年には、個展「王国」で日本写真批評家協会賞新人賞を受賞するなど、今日までの日本写真界の礎を築いた、戦後を代表する写真作家だ。
和歌山の女性刑務所、北海道の修道院など、社会から隔離された極限状況を生きる人々にフォーカスした『王国』シリーズは、構成を変えながらも、長きに渡り見る者に影響を与えている。
「Solitaire(孤独)と読んだらいいのか、Solidaire(連帯)と読んだらいいのか、分からなかった。」
これは、タイトルの『王国』の元となったアルベール・カミュの中篇小説「追放と王国(1957年)」の一節。
奈良原は何を思い、何を考え、何を訴えるためにこの写真を撮り、作品として発表したのだろうか。
その答えは、写真展に脚を運び、あなた自身で見つけてほしい。